今回は、少し違う方向から。
というのも、前回、私は世の中にあふれた子育て本による情報に迷子にならないようにと書きました。
ですが、「こうすべき、ああすべき」式ではないタイプの子育て本があることをご紹介したいと思います。
なぜかというと、「こんな子育ても有りなんだ」式の子育て本は、私がここでお伝えしたい「ユニークな子育てのススメ」をまさに体現しているからです。
角幡唯介。職業「探検家」。
『探検家とペネロペちゃん』
この本は一体どんな本なのでしょうか?
表紙には緑豊かな大自然の浅瀬を父親と幼い少女が手をつなぎ歩いている写真があり、帯には何やら興味をかき立てる言葉が並んでいます。
私はこの角幡唯介さんの本を最初に読んだ時に衝撃を体験しました。
この本の著者である角幡さんは、出産という生命の誕生は「探検」だと言い切り、実際に子どもというひとつの個である生きた存在だと認め、探検家として勇猛果敢に子どもに向き合っています。
探検といっても、ただの探検ではありません。彼は自分自身が経験してきた極夜の世界や地図のない山よりも未知の世界に挑む探検だとして子どもの誕生や親になることを捉えています。
男性であり父親である彼は、この本のなかに登場するエピソードを見る限り、女性であり母親である妻に対しても、愛娘である通称「ペネロペちゃん」に対しても、自分とは異なる世界を生きる存在ということを前提とし、常に自分の頭と心で考え、関わり、向き合っています。
職業が探検家だからとか、そんな枠組みを超えている感じです。
探検家という自分自身の生き方そのままに家族と共に生きているし、それは当然、子育ての仕方にも大きく影響していることがわかります。
子どもの成長という過程に、親である自分にとって未知なものとしての子ども独自の別世界があり、その子どもの世界を探検するというかたちで関わる彼の子育ては、とても特殊でとてもユニークで、とても彼らしく、とてもペネロペちゃんらしいと言えます。(そして、あまり多くは語られてないですが、角幡さんの妻であるペネロペちゃんの母親も当然、このユニークな子育てに多大な影響を持っているものと想像します。だって、この本の出版にある意味でゴーサインをした稀有な存在なわけですから。)
この本で語られる子どもへのまなざしや子どもとの関りは、まさに「子育てに唯一の正解はない」ということを実演してくれています。
楽しさや喜びのみならず、寂しさや苦しさや腹立たしさも含めた子どもと親というそれぞれに異なる個性をもった存在の絡み合い、関わり合いの経験が赤裸々に語られています。
それは、子どもに本気で関わりながら、しかしそれがとことん自分自身と向き合う体験だということを教えてくれます。
そんな関わりを通して、子どもはよりその子らしく、親である自分もまたより自分らしくなっていくのだろうなと夢想します。
良い悪いではない、自分たちらしい家族としてのユニークな歩みに。
(角幡唯介『探検家とペネロペちゃん』幻冬舎,2019.より)
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